Bar Beer ☆ Barbie

一年ぶりに故郷、沖縄に帰省した。

タイ化した体はバンコクより数段蒸暑い島の気候にすぐには適応できず、昼間は動く気も起こらない。従い日中は家の中でぐったりとして過ごす事となるが、日が暮れると昼間と打って変わってタイ化した精神は高揚し始め、友人達を誘って夜の街へ繰り出して行く。

ほぼ毎日のように友人達と遊びに行ったのは那覇の歓楽街、松山。高級スナックからキャバクラ、フーゾクまで一通り揃っている便利な場所だ。

今一番流行っていると言われるキャバクラへ行く。土曜日という事もあり上品なインテリアの広い店内は満員御礼。ああ、照明が明るい・・・。

キャバ嬢はほとんどが本土からの出稼ぎ娘のようだ。皆同じ巻き毛やボリュームのある重そうなヘアスタイルそして画一的なメークアップ。没個性的な女の大群は大量生産アンドロイドを見るやうだ。

友人達は盛り上がっているようだが、環境不適応を起こしてしまった僕は何を話題にして良いかも分からない。キャバ嬢との会話も途絶えがちだった。



二次会は僕の希望で近くのフィリピンパブへ。興業ビザでの日本入国が厳しくなり、フィリピーナが激減して久しい。那覇でもフィリピーナがいるのはこの店だけになってしまったようだ。店内には米兵の姿も多い。ということはベース（基地）近辺でも状況は同じという事か。

先ほどのキャバクラと違って暗い照明、弛緩した空気、ノー天気なホスピタリティがメゲていた僕の心を優しくケアしてくれる。

タイ娘と寸分違わずフィリピン娘たちも金と飯にはさすが目ざとい。ある友人への土産に持ってきたタイの各種食材の詰まったFoodLandの袋を見つけると、強烈なおねだりが始まった。特に人気はクノール固形スープの素（ポーク、トムヤム）。日本ではチキン、ビーフくらいしか入手できないようだ。

「こんなもので良ければ幾らでも呉れてやるぞい！」
タイの食材を店内でばら撒く。友人には持ってくるのを忘れてしまったと言い訳しておこう。

「サラマット！プヤ～」
「プヤ～、アコも欲しい！」
十数人の娘が津波のように押し寄せ、手が胸が顔が目の前で交差し、そして引いて行く。最後に残されたのはラープの素だった。



翌日の日曜も松山で飲んでしまった僕たちは、また店を訪れた。
午前1時すぎの店内に客は誰もいない。ヒマそうな娘達がわんさか寄ってきた。

「プヤ～。まだ、ご飯食べてないだからね～。ごめんね～」
客席で夜食を喰らう娘たち。もちろん支払いは僕達だ。



これが亜細亜の流儀・・・